卵のかげ

みんなのこえが天にのぼるのだが
みんなのかなしみが雲になるのだが
みんなの夢は風になるのだが───
 
天は光がまぶしくて
かんがえることもできはしない
どこまでふかれてゆけばよいのかしら
いつまで待っても
返事がこないのだよ どこからも
 
みしらぬ砂漠に小さな花が咲いていて
どこかの海辺にくらげたちが遊んでいるばかり
 
時間の中で月が小さくなってゆくのだ
空間の奥で太陽も消えてなくなるのだ
 
卵のかげみたいに うす青く
地球のかげが
虚無にうつっているのは美しいな

蔵原伸二郎
詩誌「雑草」初出
1951

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