夜の花をもつ少女と私

眠い――
夜の花の香りに私はすつかり疲れてしまつた

 ××
 これから夢です

 もうとうに舞台も出来てゐる
 役者もそろつてゐる
 あとはベルさえなれば直ぐにも初まるのです

 ベルをならすのは誰れです
 ××

夜の花をもつ少女の登場で
私は山高をかるくかぶつて相手役です

少女は静かに私に歩み寄ります
そして

そつと私の肩に手をかける少女と共に
私は眠り――かけるのです

そして次第に夜の花の数がましてくる

尾形亀之助
色ガラスの街」所収
1925

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