自分の感受性くらい

ぱさぱさに乾いてゆく心を
ひとのせいにはするな
みずから水やりを怠っておいて

気難しくなってきたのを
友人のせいにはするな
しなやかさを失ったのはどちらなのか

苛立つのを
近親のせいにはするな
なにもかも下手だったのはわたくし

初心消えかかるのを
暮らしのせいにはするな
そもそもが ひよわな志しにすぎなかった

駄目なことの一切を
時代のせいにはするな
わずかに光る尊厳の放棄

自分の感受性くらい
自分で守れ
ばかものよ

茨木のり子
自分の感受性くらい」所収
1977

3 comments on “自分の感受性くらい

  1. 茨木のりこの詩、ぐさっときました。そのとおりだと思いました。今とある詩のサイトからやむを
    得ず自ら去った私です。詩を書くことは一人でもできるのですが、仲間を失うということが
    これほどつらいこととは思ってもみませんでした。故にこのような茨木さんの詩を拝読すると
    非常に心が痛みます。

    1. 芳賀様、その後状況はいかがでしょうか?
      新たな発表の場は見つけられましたか?色々と大変なことがあったようですが、頑張ってくださいね。

  2. パンのためと言い訳ばかり、言っている私です。もっと、もっと自分のことを大事にして、文学の勉強をしなくてはと、改めて認識しました。残り時間を考えると、もう一刻の猶予もできません。自分の感受性は自分で守る。当たり前の事を忘れていました。

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