胡蝶 一もと菫 物思ふ ゆふべ胡蝶の 舞ひ落ちぬ。 しきりに蝶は ささやきつ、 うれしげに花は うなづきつ。 仮の契りに 紫の 露やこぼして 別れけん、 再び蝶は 帰り来ず、 菫は終に 萎みけり。 正岡子規 「この花」所収 1897