くらし

食わずには生きてゆけない。
メシを
野菜を
肉を
空気を
光を
水を
親を
きょうだいを
師を
金もこころも
食わずには生きてこれなかつた。
ふくれた腹をかかえ
口をぬぐえば
台所に散らばつている
にんじんのしつぽ
鳥の骨
父のはらわた
四十の日暮れ
私の目にはじめてあふれる獣の涙。

石垣りん
表札など」所収
1968

One comment on “くらし

  1. 腑に落ちる。石垣りんの詩を読んだ時の何時もの感想。今、岩波文庫伊藤比呂美編の詩集を読んでいます。原子童話の「雪崩のとき」、まるで現代を映しているようです。

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