強敵

一つの花に蝶と蜘蛛

子蜘蛛は花を守り顔

子蝶は花に酔い顔に

舞えども舞えどもすべぞなき

 

花は子蜘蛛のためならば

子蝶の舞をいかにせん

花は子蝶のためならば

子蜘蛛の糸をいかにせん

 

やがて一つの花散りて

子蜘蛛はそこに眠れども

羽翼も軽き子蝶こそ

いずこともなくうせにけれ

 

島崎藤村

若菜集」所収

1897

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