冬の虹

駅の陸橋をわたるとき
虹が出ていた
消えかけていたけれど美しかった
誰も気がつかなかった
教えようとしたら汽罐車の煙が吹き消した
あっというまもなかった
(人生にはこれに似た思い出がたびたびある)
改札口のところで振り返ったが
やはり見えなかった

木下夕爾
「定本 木下夕爾詩集」所収
1966

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