山の歓喜

あらゆる山が歓んでゐる
あらゆる山がかたつてゐる
あらゆる山が足ぶみして舞ふ、踊る
あちらむく山と
こちらむく山と
合つたり
離れたり
出てくる山と
かくれる山と
低くなり
高くなり
家族のやうに親しい山と
他人のように疎い山と
遠くなり
近くなり
あらゆる山が
山の日に歓喜し
山の愛にうなづき
今や
山のかがやきは
空いつぱいにひろがつてゐる

河井酔茗
「弥生集」所収
1921

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