狐のわざ

庭にかくるゝ小狐の

人なきときに夜いでて

秋の葡萄の樹の影に

しのびてぬすむつゆのふさ

 

恋は狐にあらねども

君は葡萄にあらねども

人しれずこそ忍びいで

君をぬすめる吾心

 

島崎藤村

若菜集」所収

1897

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