若菜集(序文より)

こゝろなきうたのしらべは

ひとふさのぶだうのごとし

なさけあるてにもつまれて

あたゝかきさけとなるらむ

 

ぶだうだなふかくかゝれる

むらさきのそれにあらねど

こゝろあるひとのなさけに

かげにおくふさのみつよつ

 

そはうたのわかきゆゑなり

あぢはひもいろもあさくて

おほかたはかみてすつべき

うたゝねのゆめのそらごと

 

島崎藤村

若菜集」所収

1897

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