扣鈕

南山の たたかひの日に

袖口の こがねのぼたん

ひとつおとしつ

その扣鈕惜し

 

べるりんの 都大路の

ぱつさあじゆ 電燈あをき

店にて買ひぬ

はたとせまへに

 

えぽれつと かがやきし友

こがね髪 ゆらぎし少女

はや老いにけん

死にもやしけん

 

はたとせの 身のうきしづみ

よろこびも かなしびも知る

袖のぼたんよ

かたはとなりぬ

 

ますらをの 玉と碎けし

ももちたり それも惜しけど

こも惜し扣鈕

身に添ふ扣鈕

 

森鴎外

うた日記」所収

1907

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