人氣なき公園の椅子にもたれて
われの思ふことはけふもまた烈しきなり。
いかなれば故郷のひとのわれに辛く
かなしきすももの核を噛まむとするぞ。
遠き越後の山に雪の光りて
麥もまたひとの怒りにふるへをののくか。
われを嘲けりわらふ聲は野山にみち
苦しみの叫びは心臟を破裂せり。
かくばかり
つれなきものへの執着をされ。
ああ生れたる故郷の土を蹈み去れよ。
われは指にするどく研げるナイフをもち
葉櫻のころ
さびしき椅子に「復讐」の文字を刻みたり。
萩原朔太郎
「純情小曲集」所収
1925