秋の日の下

 秋の日の下、物思いの午後、芝生の上。

取り出せるは、皺になれる敷島の袋、

残れる一本を、くわえて、火を点ず、

残れる火を、さて敷島の袋にうつす、

秋の日の下、物思いのひるさがり、芝生の上、

めらめらと、袋は燃ゆらし 灰となりゆく、

あわれ、我が肺もこの袋の如、

日に夜に蝕まれゆくか、

秋の日の下、くゆらす煙草のいとからし。

 

梶井基次郎

「梶井基次郎全集」所収

1922

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