汀ににほふ糸桜、
うつる姿のやさしきに、
駒の手綱もゆるみては、
小草をあさる黒かげの、
たてがみかろき春の風。
手折りて君か給ひたる、
色香にたへなるこの枝の、
上ふく風に二三ひら、
長きみ袖にちりかゝる、
花の心もなつかしや。
雲になりゆく花のかげ、
みかへる君も朧ろにて、
香おくる風の床しくも、
たれの胸より立ち初めし
長き思ひもなびかせて。
山川登美子
「新声」第1編第4号 所収
1899
汀ににほふ糸桜、
うつる姿のやさしきに、
駒の手綱もゆるみては、
小草をあさる黒かげの、
たてがみかろき春の風。
手折りて君か給ひたる、
色香にたへなるこの枝の、
上ふく風に二三ひら、
長きみ袖にちりかゝる、
花の心もなつかしや。
雲になりゆく花のかげ、
みかへる君も朧ろにて、
香おくる風の床しくも、
たれの胸より立ち初めし
長き思ひもなびかせて。
山川登美子
「新声」第1編第4号 所収
1899