水の底、水の底。住まば水の底。深き契り、深く沈めて、
永く住まん、君と我。
黑髪の、長き亂れ。藻屑もつれて、ゆるく漾ふ。夢なら
ぬ夢の命か。暗からぬ暗きあたり。
うれし水底。淸き吾等に、譏り遠く憂ひ透らず。有耶無
耶の心ゆらぎて、愛の影、ほの見ゆ。
夏目漱石
寺田寅彦宛の端書より
1904
水の底、水の底。住まば水の底。深き契り、深く沈めて、
永く住まん、君と我。
黑髪の、長き亂れ。藻屑もつれて、ゆるく漾ふ。夢なら
ぬ夢の命か。暗からぬ暗きあたり。
うれし水底。淸き吾等に、譏り遠く憂ひ透らず。有耶無
耶の心ゆらぎて、愛の影、ほの見ゆ。
夏目漱石
寺田寅彦宛の端書より
1904