疲労

南の風も酸っぱいし

穂麦も青くひかって痛い

それだのに

崖の上には

わざわざ今日の晴天を、

西の山根から出て来たといふ

黒い巨きな立像が

眉間にルビーか何かをはめて

三っつも立って待ってゐる

疲れを知らないあゝいふ風な三人と

せいいっぱいのせりふをやりとりするために

あの雲にでも手をあてて

電気をとってやらうかな

 

宮沢賢治

春と修羅 第三集」所収

1926

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